八週間講座
タイトル「木蓮の庭」

人  物
野田 薫子(のだゆきこ)(15)伯爵令嬢
中原 譲(23)野田家居候
野田(中原)新一郎(55)死去。譲の兄で薫子の父
野田美佐子(32)幸子の母
沼澤丹三郎(61)薫子の父の親友
菜都乃(22)花魁。
波(62)薫子の乳母や)

○文京区・野田伯爵邸の家の外
    白木蓮が数本咲く庭。その先には大き
    な白の洋館が建つ。

○同・玄関内
    話し声が聞こえドアが開く。ハレーシ
    ョンを起こすほどの陽光の中から大勢
    の若い男達に囲まれ、新田信春(27)と腕
    を組み乗馬服姿の野田薫子(15)が現れる。

○同・居間
    音を立てドアが開き薫子、新田と男
    達が楽しく話しをしながら入って来る。
    それを本を読みながらソファーでくつ
    ろいでいた中原譲(24)が見つめる。薫
    子、中原に気づき眉根を寄せる。
薫子「あら、譲さんいらっしゃったの?」
中原「お嬢様は... 、本日乗馬ですか?」
    怪訝な顔の薫子に、貫井波(68)の声。
貫井波(59)「お嬢様!!」
    落ち着いた着物姿の波、ボーイフレンド
    達の中心に立つ慌てて薫子に近づく。
波「野田伯爵家の令嬢がはしたない。亡きお
  父様が嘆きますよにどうお詫びすれば... 」
薫子「そんな大げさな。色々と教えて頂いて
  いるだけよ。今日は乗馬を見て頂いたの」
波「そんな、お嬢様には譲様という婚約者が
  いらっしゃるんですよ。それを!!」
薫子「関係ないわ。いくら甥だからってお父
  様がお決めになった婚約だからって、私は
  納得などしておりませんわ」
    中原、薫子を見てクスリと笑う。
中原「いいじゃないですか、お嬢様は兄が決
  めたフィアンセの俺よりも他の殿方にご興
  味がお有りだ、ね、薫子さん」
    むくれる薫子。ドアが開き夜会巻の髪
    に艶やかなドレスの野田美砂子(32)が入室。
薫子「お母様!!」
美砂子「御機嫌よう沢山の友達と楽しそうね」
薫子「今晩、お友達のお誘いで鹿鳴館参ります」
美砂子「そう... 、それは素晴らしい... 」
    美砂子座っている中原に気づく。
美砂子「あら譲さんここにいらしゃったの?」
    美砂子は中原の元へ近づき本を閉じて
    美砂子の元へ行き肩を抱き二人は退出。
    取り残された薫子は拳を握り苛立ち、
    波は途方に暮れる。
薫子「波!!皆様にお茶を!」
    波、渋々部屋を出て行く。

○美砂子・部屋の中
    美砂子煙管に火を点け紫煙を吐き出す。
    中原は少し離れた所でそれを見ている。
美砂子「鹿鳴館ね... 」
    中原楽しそうに笑う。
中原「確かにお義姉さんの時ならいざ知らず
  今では評判が悪い事この上ないんですがね」
美砂子「あの人を狙った方々... 」
中原「大丈夫僕も行きますよ。兄さんを狙っ
  た無頼漢や変な渡来者も多いですからね」
美砂子「そう云う顔をしている貴男は死んだ
  あの人にそっくり... 、ぞくぞくするわ... 」
    灰を落とし煙管を置くと美砂子中原に
    躙り寄り躯を擦り付ける。中原は途方
    に暮れ離れようとするが美砂子は両手
    を手を中原の首に回し縋り付く。
中原「そりゃあ、兄弟ですから... 」
美砂子「そんな嫌みな所もそっくり... 」
    美砂子中原の唇を舌で何度も舐り中原
    苦笑しつつスカートをた往くし上げる。



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