○文京区・野田伯爵邸の家の外
白木蓮が数本咲く庭。その先には大き
な白の洋館が建つ。
○同・玄関内
話し声が聞こえドアが開く。ハレーシ
ョンを起こすほどの陽光の中から大勢
の若い男達に囲まれ、新田信春(27)と腕
を組み乗馬服姿の野田薫子(15)が現れる。
○同・居間
音を立てドアが開き薫子、新田と男
達が楽しく話しをしながら入って来る。
それを本を読みながらソファーでくつ
ろいでいた中原譲(24)が見つめる。薫
子、中原に気づき眉根を寄せる。
薫子「あら、譲さんいらっしゃったの?」
中原「お嬢様は... 、本日乗馬ですか?」
怪訝な顔の薫子に、貫井波(68)の声。
貫井波(59)「お嬢様!!」
落ち着いた着物姿の波、ボーイフレンド
達の中心に立つ慌てて薫子に近づく。
波「野田伯爵家の令嬢がはしたない。亡きお
父様が嘆きますよにどうお詫びすれば... 」
薫子「そんな大げさな。色々と教えて頂いて
いるだけよ。今日は乗馬を見て頂いたの」
波「そんな、お嬢様には譲様という婚約者が
いらっしゃるんですよ。それを!!」
薫子「関係ないわ。いくら甥だからってお父
様がお決めになった婚約だからって、私は
納得などしておりませんわ」
中原、薫子を見てクスリと笑う。
中原「いいじゃないですか、お嬢様は兄が決
めたフィアンセの俺よりも他の殿方にご興
味がお有りだ、ね、薫子さん」
むくれる薫子。ドアが開き夜会巻の髪
に艶やかなドレスの野田美砂子(32)が入室。
薫子「お母様!!」
美砂子「御機嫌よう沢山の友達と楽しそうね」
薫子「今晩、お友達のお誘いで鹿鳴館参ります」
美砂子「そう... 、それは素晴らしい... 」
美砂子座っている中原に気づく。
美砂子「あら譲さんここにいらしゃったの?」
美砂子は中原の元へ近づき本を閉じて
美砂子の元へ行き肩を抱き二人は退出。
取り残された薫子は拳を握り苛立ち、
波は途方に暮れる。
薫子「波!!皆様にお茶を!」
波、渋々部屋を出て行く。
○美砂子・部屋の中
美砂子煙管に火を点け紫煙を吐き出す。
中原は少し離れた所でそれを見ている。
美砂子「鹿鳴館ね... 」
中原楽しそうに笑う。
中原「確かにお義姉さんの時ならいざ知らず
今では評判が悪い事この上ないんですがね」
美砂子「あの人を狙った方々... 」
中原「大丈夫僕も行きますよ。兄さんを狙っ
た無頼漢や変な渡来者も多いですからね」
美砂子「そう云う顔をしている貴男は死んだ
あの人にそっくり... 、ぞくぞくするわ... 」
灰を落とし煙管を置くと美砂子中原に
躙り寄り躯を擦り付ける。中原は途方
に暮れ離れようとするが美砂子は両手
を手を中原の首に回し縋り付く。
中原「そりゃあ、兄弟ですから... 」
美砂子「そんな嫌みな所もそっくり... 」
美砂子中原の唇を舌で何度も舐り中原
苦笑しつつスカートをた往くし上げる。