テーマ「盗む」
タイトル「Jokerの微笑み」

人  物
黒木 昭子(31)別れさせ屋
赤池 徹(33)昭子の相棒
青沢 道夫(22)昭子の恋人
男A、B、C
新郎、新婦
受付

○青沢の作業場 (夜)
   暗がりに14個の様々な細工がされた、
   額縁が置かれ、その先に大きめの蝋燭
   が三本立てられている。形の異なる彫
   刻刀十数本入っている木製の道具箱に、
   青沢道夫(22)は、使っていた彫刻刀を
   戻すと、ニッと笑う。

○同・外 (夜)
古ぼけたアパート二階にある、青沢の
作業場を見上げるように、正面の道路
に車を止めて男A、男Bが立っている。
鉄製の階段を慌てて降りる音が聞こえ、
男達が振り向くと、走って降りてきた
男Cが叫ぶ。
男C「青沢が逃げた!!」
男A、B驚く。

○ホテル グランドパレス・全景
日差しがビルの上から差し込んでいる。
ホテルの塀には、ホテルグランドパレ
スと書かれ、正装をした男女数人が、
出入りしている。

○同・中央階段
真っ赤な絨毯が敷かれた豪華な細工の
された階段を、新婦はウェディングド
レスの裾をたくし上げ、ベールを振り
乱し、化粧が禿げるのを気にせず駆け
上がっていく。正装姿の男女と、ホテ
ル従業員が唖然と見ている。

○同・新郎控え室前・廊下
人通りは無く、新婦が中を覗く。新郎
と黒木昭子(31)が談笑する声が聞こえ、
新婦は腹立て部屋に乗り込む。

○同・新郎控え室・中
椅子に座っている新郎の横に昭子が立
っている。新婦は息を上げながら新郎
に近寄り、叫ぶ。
新婦「どういう事なの!式に来ないで!この
女は何よ!」
新郎「云っただろう、君と結婚したくない」
新婦「この女に乗り換えるって訳!今、皆に
待って貰ってるの、間に合から!」
新郎に縋り付く新婦。新郎は、サイド
テーブルに写真の束を、新婦の目の前
に落とす。新婦は、それを見て愕然と
する。写真には新婦と赤池徹(33)がラ
ブホテルに入るところが写っている。
新婦「これは…」
新郎「君がこんなだらしない女だったなんて、
残念だ。さようなら…」
新婦、新郎の顔を叩こうとする。しか
し、新郎の腕で取り押さえられる。新
婦、新郎の腕を払い、泣きながら退場。
昭子は、その姿を見つめ、溜息を付く。
昭子「あ、あ可哀相に泣いちゃって」
新郎はタイを弛め、煙草を吸う。
新郎「って、あんたがそれ云うか?ま、とに
かく助かったよ。良い所のお嬢だから、結
婚、結婚って変だったんだよ」
ポケットから新郎は、少し厚みのある
封筒を取り出す。受取、昭子は中を見
ると、萬札が入っている。にんまりし
ながら、昭子は札を数え始める。
新郎「ま、これであっちの責任で破談だし、
手数料百万なんて安いものか」
昭子「何でわざわざ結婚式当日にこんな事」
新郎「そりゃあ、当日の方がおもしろいじゃ
ないか…」
昭子あきれて、ため息をつき、新郎か
ら離れる。
昭子「ネガはこっちの保険だから、当分は預
かっておくから。また何か有りましたら、
どうぞご連絡下さい」
札を握り締めながら、昭子は微笑む。

○公園前の道路
交通量の多い三車線道路、脇には大き
な公園がある。何台か路上駐車してい
るなか、車が一台赤のスポーツカーが
止まってる。

○車前歩行者通路
昭子が、赤のスポーツカーに乗り込む。

○車中
運転席で赤池が昭子を迎える。赤井は
Tシャツに長袖のシャツを重た、秋葉
ルックをしている。
お疲れさん」
ちょろい、ちょろい」
赤池は、昭子に何かくれと云わんばか
りに手を出す。昭子、嫌な顔をすし、
鞄から先程、新郎から貰った封筒を取
り、十万を渋々渡す。
また秋葉、投資?」
失敬な、基礎研究と呼んでくれ。次の
への基礎投資」
で、次の仕事の見取り図は?」
ばっちり、エビチリ」
嫌な顔をしている昭子の前に、会社の
見取り図を赤池は開く。
この会社は、全入り口に警備がいるけ
そこ通り過ぎると穴だらけな、アナゴ」
不機嫌な顔の昭子を後目に、赤池は説
明を続ける。
まず、この社員証を見せれば、中に入
から…」

○会社 黄嶋・全景 (朝)
社員が疎らに出勤している。大きく豪
華な八階建ての一号館とその横に古い
二号館が建っていて、その中央に社員
入り口がある。それを囲う塀と、入り
口には、”株式会社 黄嶋”と書かれ
ている。

○社員入り口 (朝)
緊張した面もちで、中位のビジネスバ
ックを持ち、黒の上品なパンツスーツ
姿、片方をはずして、右耳だけヘッド
ホンがの昭子が社員証を胸に付ける。

○社員通路
歩いている昭子。”ピー”」となり、
右耳を押さえる。

○同・会社の反対車線の道路
白いバンが止まっている。

○同・車内
モニターが五台並んでおり、いずれも
株式会社黄嶋社内の様子が写っている。
耳にインカムを付けている赤池はが、
手元の時計に目をやる。
赤池「社内の防犯カメラは五台。一台は会社
一階のメインロビーに…」

○同・一階メインロビー
受けの社員二人が、客の応対をしてい
、客も二人ずつ、二組いるロビーに、
防犯カメラ設置されている。

○同・一階エレベータホール
十五人の男女、服装もスーツ、ラフな
ジーンズと様々な社員がエレベータの
到着を待っている。その中に昭子もい、
写らないように位置を確認する。
赤池の声「二つ目は、エレベータホール、三
つ目と四つ目は、エレベータの中…」
エレベータが到着し、昭子乗り込む。

○同・車内
赤池がモニターをチェックする。エレ
ベータの中はすし詰めで、昭子は写っ
ていない。
赤池「最後は社長室のある八階のエレベータ
ホール。でも、ここには、滅多なことで社
員は降りないから、まず七階で降りる…」

○同・七階エレベータホール
エレベータが到着し、中から数人の社
員と昭子が降りてくる。
赤池の声「そして、社長室のある八階まで、
階段で上がる」

○同・通路

○同・階段
階段を上がる昭子。七階と八階の間に
は、七/八と書かれている。八階まで
上がると死角となる壁に隠れる。

○同・通路
壁の先には防犯カメラが見える。
赤池の声「そのカメラは、一分で一周するだ
から死角を縫うようにすれば、目的の絵の
ある応接室だ。時間合わせるよ」
昭子は、腕時計の秒針を0に合わせる。
赤池の声「GO」
昭子ゆっくりと秒針をみながら歩き出
す。壁から五メートル先の応接室まで
遠回りをして歩く。

○同・車内
赤池がモニターをみている。モニター
には八階の風景が写る。ゆっくりとモ
ニターが応接室の扉を移す。赤池、安
安堵のため息を付く。

○同・応接室
昭子が応接しつに掛けられている絵を
はずし、額と絵を分ける。そして、額
の内側の部分に付いた小さなねじをは
ずすと、中から紙切れが出てくる。昭
子は、破片のようで何が書かれている
か判らない。昭子はあわてて額に絵を
戻す。そして絵が掛かっていた場所に
直し、部屋を出る。

○同・車内
防犯カメラが、エレベータホールにい
る昭子を写す。赤池はため息を付く。

○同・階段
階段を駆け下りている昭子。

○同・会社反対車線の道路
昭子が近づく。

○同・車内
赤池運転席で待っていると昭子が乗り
込み、車は発進する。
赤池「で、どうだった」
昭子「何とか、破片一枚GET!って感じね。
後、五枚…。これが集まれば、道夫の消息
も分かる…」
昭子から破片を赤池は受け取る。
赤池「青銅の悪魔…、ゴート札の原盤ね…」
紙切れを赤池は、日差しにすかせるが、
その紙切れからは、何が書かれている
か読みとれない。

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