2007/11/14
METABOな夜〜 ふぁいなる・かうんと・だうん |
幼なじみな彼は昔からどこに行っても、人気の中心にいた。
彼の持つその大きな目、いつも艶やかでプルンとした唇、小さめな顔、抱きしめると腕の中にすっぽりと入ってしいそうな華奢な体躯。 見た目だけではない。 皆に優しく、どんなきもいデブでも、油ぎっしゅなキモヲタでも差別することなく、彼は笑顔で接している。 そして、頭の回転も速く、勉強も出来る。しかしそれを鼻にかけることは絶対にしない。 容姿、性格、頭脳、どれをとっても、そこら辺の女子と比べる方が悪い気がするほど、パーフェクト。 男だというハードルさえ簡単に超えられるのであれば、誰もが彼を自分の物にしたい。 誰もが思っても、横に常にいる人間には、そうそう慣れない。 かく言う俺も、彼とは幼なじみで、三歳の頃から彼を知っている。けれども、彼は奥ゆかしい所やもてすぎの部分もある所為もあって、最後のラインを超えるのはなかなか至難の業だった。 彼はいつも十二時近くまで遊んでいるシンデレラ。 ガラスの靴を手に入れれば、すぐに誰かに上げるために、遊びに行く。 女の影があるわけだから、心配はない。 しかしいつも男同士で遊んでいる彼が、あまに可愛すぎて心配だった。 俺は、そんな寂しがりやの彼に試されるように、しばしば迎えに行き、一人暮らしをしている彼を家まで送る。 俺が彼に出来るのは、その程度だった。 家まで車で送ってあげれば、心優しい彼は、いつも真夏の太陽の様な眩しい笑顔で言う。 『有り難う』 俺はそれだけで満足だった。 けれども、俺も彼もまもなく、三十路を迎える。 いつまでもプラトニックなまま、彼は童貞のまま過ごすには、さすがに年を取り過ぎた。 今日こそは、せめてキスを…。 出来ればそれ以上の関係になって、お互いの本心を確かめ合わなければいけない。 きっと、彼は初すぎて自分から言えないだけだ。 ならば俺から、導いてやなければいけない。 大木知春は、その晩大きな決意を抱いて、彼の行きつけの店に向かった。 * * * ダンダンダン、ダンダダン。 店では軽快なロックが鳴り響いている。 飲み屋にしては、いささか迫力がある曲だけれども、これも演出の一つ。 まもなく店ではSHOWが始まる。 戸波渉はカウンター席に腰掛け、店のママのナンシーが作ってくれた酒をくっと一口口に含んだ。 酒はそれほどいい酒ではない。 国産醸造所で作られた、年数もそれほど立っていない、最寄りの酒屋で買えば一本千円もかからないウィスキー。 それでも店のママ、ナンシーが奇麗に洗っているのか判らない太い太い脂肪がみっちり付いた、人差し指で氷と酒をかき混ぜてくれただけで、常連客の渉にとっては酒の価値以上の付加価値が合った。 まだこの店を持った頃のナンシーと渉はつき合っていた事もあった。 しかし人には別れは付き物で、その内ナンシーが一つの決意を渉にした。 それが決定打で、二人は別れる事になったのだけれども、お互い思いは似ていて、セックスはしていなくても、いいお友達でいられた。 音楽の音が大きくなり、店にはハードなギターとベースの音が鳴り響く。 そこでナンシーがショットグラスを持つ渉の手に自分の、野球のグローブと比べてもひけを取らない手を重ねる。 重なった手はじっとりと汗をかいていて、生理用ナプキンのCMの様な湿気のないさらりとしている渉の手を汚す。 「あたし、時々思うのよ…」 ベースの音よりも地を這う低さで、イノシシの雄叫びよりも野太いけれども、必死に鼻にかけて可愛らしさを装うナンシーの声。渉はすっきりと爽やかなコカ○ーラの様な声、周りに響いているロックに負けないように、ほとんど怒鳴り声を出す。 「何が?」 渉は一回じめじめした、ナンシーの手を自分の手から外すと、カウンターの上に置く。そして今度はそのもしかしたらキャッチャーミットとも比べられるのではないかと思える手に、渉の爪までが芸術と思われる奇麗に調った手を重ねた。 その瞬間、バックに流れていたきついほどのロックは静かな、バラードに変わりやっとナンシーと普通に話せる心地に変わる。 「渉ちゃんと別れなかったら、あたしの運命どうなっていたのかなって…」 「それは、手術をしなかったらって事?」 「そう…」 キューティクルきらきらのウィッグを弄りながらナンシーは頷いた。 「彼と上手くいってないの?」 渉はナンシーのベースにも似た手から自分の白く美しい手を外すと、カウンターに肘を突き、手の上に頬を乗せた形で渉が首を傾げる。ナンシーはあまりアンパン○ン顔負けな分厚い頬を膨らませ、唇とドラエもんにでも出てきそうな突き出した形にする。 「そんな〜、ことは〜、ないんだけど〜」 まるで十数年前に流行ったブリッコでもしているのかと思わせるように、解放された木材と比べたら木材が怒りそうな太い手を自分の前で絡ませるように組み、熊の様な迫力がある分厚い肩を振った。 「ちょっとね、昔が恋しくなっちゃっただけ…。渉とつき合っていた頃が楽しかったな〜っておもっちゃったの…」 どこまでもヒロインを装おうとして大失敗している瞼の下で、ばさばさと音のなりそうな小さな瞳を輝かせて、ナンシーは大地が揺れるのではないかと思わせる溜息を付いた。 「僕は、今のナンシーも好きだよ。もちろん女になったナンシーとはもうHな事はできないけどね…」 「そうよね。あの日、あたしは渉が止めるのも聞かずに、タイに向かった。男を捨てて女になるために…。渉はホモで、女とは出来ないって知っていたのに…」 「そうだね…。でも今でもナンシー君とはいいお友達だ…」 ぼってりとした脂肪を隠せないほどの一重を無理矢理化粧品で二重にしているナンシーの瞳が更に潤んでくる。 「お友達…。残酷な言葉よね…。でも渉を捨てたのは、あたしだもんね…」 「君の大きく膨らんだ豊満な腹、だんだん畑の様に緩んだ股…。本当に好きだった。君を抱いて抱いて抱きまくっているときが…」 「渉…。あんたはいつも優しいわね…。あんたの優しさは本当にあたしの希望だわ。そうね…、今の彼氏も、人工だけど、たるんだくらいにデカイ乳も、それに負けない胃も、更に追い打ちをかける腹すら愛してくれるわ…」 「ならよかった」 渉は大きな二重の目を開いて、ナンシーに笑いかける。ナンシーは店で使っている台拭きで流れ落ちる真珠とはまったくかけ離れたくらいに化粧で黒くなっている涙を拭いた。 「実はさ、彼から、プロポーズされたのよ。こんなオカマでも幸せになれるんだと思ったんだけどさ、でももしからかわれていたらって思ったら不安になったちゃって…」 「大丈夫、僕は大吾だった頃もナンシーとして、りっぱな女になった君も好きだから…」 「有り難う、本当に…、渉はいい人だわ…。渉にもいい人が現れるといいんだけど…」 ナンシーは更にどす黒い涙を流した後、台拭きで思い切り鼻を噛む。そして一つ落ち着いた後、渉に京都のおたべ人形も真っ青になる笑みを見せた。 「いい笑顔だよ、ナンシー。大丈夫、僕にもいつかいい相手が見つかるさ。僕の大好きなハンプティダンプティに負けないくらい格好いい男が…」 「渉は可愛すぎて、相手が抱きたがっちゃうから、おかま掘られないように気を付けなさいよ」 「そうだね。僕はハンプティダンプティを僕の楔でどーんて付いて啼かせたいんだから…」 今泣いた烏は何処にいったのかと言うほど、ナンシーは身の毛のよだつほどの笑顔で渉の腕を松茸を連想させそうなぶっとい指でつついた。 「渉ちゃんは本当にSよね…。でも昔のあたしみたいに、食べちゃいたいくらいに可愛くて奇麗で渉ちゃんに抱かれたい〜って人間もいるわ、きっと」 「ナンシーにそう言って貰えると僕も嬉しいよ。で、ナンシーの今の彼氏ってどう言う人?」 「えっ…、は・ず・か・スィー・イ〜」 「そうなの?」 「でも特別に渉ちゃんにだけ、教えちゃう」 そう言ってこっそりカウンターに忍ばせていた写真を取り出す。 ナンシーとツーショット写真。 画面に溢れんばかりのナンシー。そして相手はベースの様な四角い顔。プロレスラーにも間違えられますと言わんばかりのごつい体躯。糸よりも細い目、朝食の海苔を思い出される太い眉。 どこから見ても完璧なお兄さん系。 この一点集中型の業界では、もてもて確定! と言った感じの男だった。 「もてそうだね…」 思わず渉は、自分とはまったく違ったタイプの男に、普段はぱっちりして形が整っているアーモンド型の瞳を引きつらせてしまう。 「でしょー。だからさ、ちょっと心配になっちゃったのよ…」 渉は心の中で、あぁ、なるほど…≠ニ納得してしまった。しかし彼がもてそうなことを心配しているナンシーの前では、言えるわけもない。 それほど広い業界ではないが、ホモほど好みがはっきりしている人種はいないと渉は思っていた。 自分の様に、デブ専もそうだったが、他にも髭、がたいがいいなどのクマ専など。本当に好みが集まり、酒池肉林の様にくんずほぐれる訳だ。 うーん、たくさんの脂肪の中で一晩ハーレム状態になったらどんなに幸せだろう…。 渉は自分の頭の中に、勝手に大好きなハンプティダンプティ体型の男たちを何人も連れてきて、片っ端からちょっと小降りの自分の大砲を打ちまくったらどんなに天国か考えるだけで涎が出てきそうだった。 「もー、何見とれてんの? 一郎は渉ちゃんの好みとは外れてるでしょう?」 少し拗ねた口調。しかし躯を振ればぶよんぶよんと揺れる脂肪が、ナンシーの迫力を増大させていた。 「ごめん、そんなつもりじゃないよ。ナンシーが幸せになってくれれば、いい。それよりもしかして、店は結婚退職とないよね?」 「それは今のところ大丈夫。ちょと彼が独占欲が強くってあまり他のお客さんと仲良くなるのは嫌がるのよね〜」 「まじ?」 「まじ、まじ…。でもね、この店はあたしの夢なの。この店に来るお客さん全員が笑顔で楽しんでくれればいいな〜って思ってるんだよね〜」 「じゃあ、頑張れよ…」 目をぱっちり開いて、すっきりとした唇で作った最高の笑顔を渉はナンシーに向ける。ナンシーはマスカラとはげた化粧でげしゃげしゃになりそうな目の回りを緩ませて、きゃしゃで守ってあげたいと母性本能をくすぐる渉の腕を叩いた。 「痛い、痛い…」 「もー〜」 オバQも真っ青なルージュで真っ赤に染まった唇と、化粧でどろどろになった瞳を緩ませて拗ねるナンシーの姿が、渉には幸せを満喫してるのだと伝わってきた。 気が付くと激しかった音楽は、艶っぽいアラビックな物に変わっている。 ステージでは、ジャスミンが豊満な腹を出してアラビックダンスを踊っている。 この店には物凄い確率で渉の好みのナイスバディのオカマがいる。 性転換はしてしまったが、ナンシーを始め、まだ大事な場所が付いたままでオカマをやっている脂肪が揺れるボディと柔軟性が売りのジャスミン。そして今一番相談相手になってもらっている、マリリンモンローの有名な衣装でいつも身をはみ出しているキャサリン。 他にも食べてしまいたくなるほど、ぽよんとしたボディの持ち主がたくさんいた。 それでも彼氏までいくにはなかなか商売男では難し過ぎる。 かといって自分に声をかけてくれた相手だと、ナンシーが言っていた様に自分を抱きたがる、支配したがる。 自分で声をかけた相手でも一回くらいのHは上手くいくしかし、破局することが多い。 この前失恋したときは、相手に『君が恋しているのは、俺のでっぷりと出たお腹やぽよぽよな二の腕、それにぼよんとたるんだ股だ…』と思いいきり痛いところをつかれた。 確かに好きなのだ。 脂肪が…。 子供の頃に読んだ童話で登場したハンプティダンプティに憧れてから、自分にはこれが必要なのだとしっかり自覚できた。 だから、ずっと美味しそうな脂肪たっぷりな男たちと仲良くしようと努力してきた。 学生の頃からずっと。 しかし学生の頃は、相手も純情。 なかなかベッドインまでたどり着けなかった。 そして皆、寂しそうに言う。 『君のように可愛らしくて、誰にでももてそうな男の子には自分は勿体ない…』 その一言が渉を絶望に導いていた。 思い出しただけで、悲しい過去…。 口から大きな溜息が漏れた瞬間、隣に座った渉の好みとはまったく正反対な引き締まった体型、世の中では格好いいと言われる部類の男が肩を叩く。 「渉…」 よく見ると男は幼なじみの大木知春だった。 この男、昔から格好いいと女の子にもてていたにも関わらず、渉から離れようとしない。それどころか、時として渉の恋を邪魔したりする。 もちろん親切でやってくれているのだろうが、本当に困った物だった。 まあ、今は自主的に手を挙げてくれているので、ていのいいアッシーとして使わせていただいているけれども。 これでたっぷんたっぷんと水太りでも、油ぶとりでもしてくれていたらまだつき合っていたかもしれないけれども…。 かなりがっかりしている体型と顔つきをしている男だった。 突然の大木の登場に渉は大きな瞳を、ますますそれこそひっくり返るんじゃないかと思われる程に見開いた。 「大木、どうしたんだ?」 「そろそろ十二時だから、迎えに来たんだ…」 「大木〜。まだ大人だったら遊んでいる時間だろう?」 小さく、そして丁寧に拒む。しかし大木のがっしりとした手は、渉の華奢な腕を掴んだ。 「君が心配だから迎えに来たんだ。だいたいシンデレラだって十二時の鐘がなれば返るんだぞ?」 僕はシンデレラですか? 時々この男の言っている事が、渉には判らなくなる。 何を言いたくて、比喩しているのか。 「大丈夫だよ、終電まで後三十分はあるから…」 何気なく…を装って断ってみる 終電のがしたら、ジャスミンかキャサリンの家に転がり込んでしっぽりした夜を過ごすだけだ。二人ともその辺はクールで、渉を受け入れてくれる。 そんな事、大木に語るにはもったいなさ過ぎて、話すことすら出来ずに渉はそれ以上言葉を続ける事が出来ず無言になる。 しかし世の中の多くが無言というのは、肯定したことと勘違いするらしい。 「渉! 我が儘言ってない、明日だって仕事があるんだ…。君は俺がこさえたガラスの靴をそうやって片っ端から上げて、仕舞うんだ…。いいから俺の元に帰っておいで…」 本当に何が言いたいのか、昔からまったく要領が得られない男で。 そして情けないことに、このとんちんかんな会話にこれ以上反論する気も起きなくさせられてしますという、このとんちんかんな言葉が、大木にとっては原子兵器にも勝る最強の武器だった。 渉は根負けしたように、大きな溜息を付くとナンシーに会計を頼む。そして横に立っている、まったく人間の会話という奴を理解出来ないとんちんかん男と共に帰る羽目になる。 諦めて店を出て、不本意にも大木の車に乗る。 すべてが無言の時間。 大木は何かいいたそうなそぶりを見せるが、渉は口を開くとまた訳の分からない無い口上を聞かされると思うとうんざりしていた。 車はなんの問題もなく、渉の住む街に着く。 そしてマンションの下まで到着。 「有り難う…」 まあ、ここまで送ってくれた感謝だけはしようと渉は最高の笑顔で車を降りようとする。 だがしかし、降りようとした瞬間大木が渉の腕を掴む。 バランスを崩して車に逆戻りした時を狙って、大木は渉にキスを仕掛けてくる。 勘弁してくれよ。 僕のキスはそれほど安きくないんだよ…。 などと思いながら、相手が諦める瞬間を待つ。 当然大木は、盛り上がって、盛り上がってとんでもない。 反対に渉は、冷めて、冷めてとんでもなかった。 そして少し経つと、大木が渉の唇を解放してくれる。散々口蓋を好きになぶり、上顎を舐め、舌を絡ませようと必死になり、それでも見つからない舌を諦め口の中という中をあさった後の話だった。 大木は渉を抱きしめ、頭を撫でる。 渉の頭には、固い骨が布越しにぶつかってくる。抱きしめる腕はすっきりして筋肉の形成すら渉に感じさせる。 「あ、渉…。ずっと好きだった…。俺たちもそろそろ三十代になる。もう一歩距離を縮めないか…」 「大木…」 熱い瞳を形成しているのは余分な脂肪が付いていないすっきりした顔。頬骨すら微かに感じる。 顔、腕、胸板、すべてがN.G.。 渉は大きく見開いていた瞳を細めて、視線を大木から外す。 「ごめん…。お前はいいお友達だ…。それじゃあダメか?」 反らされた渉の視線を必死に自分に戻すと、先ほどの視線よりももっと暑苦しい目で渉を見る。 「お友達…、渉。俺たちは大人だ…。いつまでも子供のままじゃない…。君がそう俺に抱かれるなんて想像出来ないのも判る…」 そこで大木は呼吸をする為に言葉を止めた。 渉からしたら想像出来ないのが判っているなら、何故こんな無駄なことをするのか。時間すら勿体ないなどという、自分にしては珍しい苛立ちが胸の奥でふつふつと沸きだした。 そりゃあ僕はハンプティダンプティを抱くことはあっても、鶏ガラのようなお前に抱かれることはない! つい口に出してはタブーな言葉が漏れそうになる。 古今東西、どんなに世の中が自由になっても、自分と違う嗜好の人間には冷たい。 ホモ歴ン十数年のの渉はそれを痛いほど感じていた。 しかしそれが通じない相手もいるのは当然。大木は骨張ってごつごつするナンシーに比べたら数段細い手で、渉の両手を掴む。 「今晩、君の部屋に俺を泊めてくれないか…。君の辛い様にはしないから…」 要するに抱きたいと…。 小さく溜息を心の中で付いた渉は、自分の手を包んでいる柔らかみが全然ない大木の手を解いた。 「大木…、有り難う…。しかり僕は君の思いには応えられない…」 「何故!」 「僕は大木が思っているほど清い人間でもなければ、聖人でもない…」 「そんなの嘘だ。自分を下卑た言い方をするなよ、渉…」 「判ってくれ。僕もずっと優しくしてくれれている大木にこんな事をいうのは辛いんだ」 「でも…」 「人にはそれぞれ、好みがある。君と僕はそのレールが少しずれているんだ…。だから僕は君の思いには応えられないんだ…」 「そんなの嘘だ…。俺を傷つけないために、君の口からの出任せだ…」 「ごめん、大木。僕は本当に君には相応しくない汚れた男なんだ〜」 渉はそう叫ぶと、止めようとする大木の腕を大きく払い車から飛び出した。 そして一目散に部屋に向かうと、思いっきり部屋に鍵をかけた。 大木が追い掛けてくるのはある程度予想していたが、幸い渉が住んでいる部屋はロックを入り口でしていて、部屋のナンバーがしらなければ入ってくることは出来ない。 あれで大木が諦めてくれるとは思っていなかった。 しかし最悪の場合は、知り合いの誰かに相談しよう。 ついでに、おまけに、大木の携帯にメールを送る。 『さよなら、今まで有り難う…』 と…。 それから着信拒否にした。 まあ、この手の勘違い男は、それほど少なくない。 おかげで対応も手慣れた手つきで渉はした。 その翌日、渉が行きつけのオカマバーでお笑い系のオカマキャサリンに慰めて貰ったのは、また別の話。 またキャサリンかい! おまけ(読む勇気のある人だけレッツ チャレンジ!!) 「あぁ〜んっ。いいわぁ〜、もっとしてぇ〜」 女にはまったく聞こえない、それこそ大地を揺るがせそうなテノールの甘えたキャサリンの声。熱い息、興奮と喘ぎ声、そして二人の性器をぶつかり合う音をひっちゃかめっちゃかに混ぜこぜにして部屋に響き渡っている。 マグナムには程遠いけれども、ワルサーP38クラスの上品な形のペニスを、脂肪がみっちっりついた股間に打ち込こんでいる渉。 白を強調した部屋には、持ち主であるキャサリンの趣味を伺わせるぴらぴらしたレースのカーテンや渉にそっくりと言われた目がパッチリしていて華奢なネコのぬいぐるみが置かれている。 「あっ、あ〜ん! あ、渉ちゃんいいわぁ〜」 興奮してキャサリン。激しい体温上昇で、滝のように流れ落ちる汗は、キャサリンという存在を忘れさせるほど、すっぴんにしたおたべ人形のような表情になっている。 キャサリンの測定不可能に近い体重を受けてきしみもしないベッド。 どすこい、と音が聞こえてくる雰囲気を残して、身悶える桜島クラスの脂肪の付いた大根足が渉の背に乗ってくる。 「っ…うっ」 きゃしゃな背にいっきに負荷が掛かり、思わず渉の口からはうめき声が漏れる。 渉にとっては最高の脂肪の圧迫感だった。 波打つ腿の脂肪は、渉の動きに自由自在に形を変化し時には、圧迫死するのではないかと思われるほどに躯に絡みつく。 段々畑のようにいくつも割れている脂肪の層は、垂れ幕か暖簾のように渉の肩からベロンとキャサリンの付け根まで繋がっている。 それでいてこの体系の人特有の滝のような汗で、べたべたになっている。 それだけで渉は興奮は増し、キャサリンの中にはまっている息子がぎゅんと力を持っていく。 「キャサリン、いいよ、最高だ君の中は…」 「キャサリンじゃない…、い、一郎って読んで…。あぁっん〜、渉ちゃん…。一郎よ…」 「ぁあ…、一郎…、気持ちがいい?」 腰の速度に強弱を付けながら、渉はすっとキャサリンの表情をまったく見えなくしている大丘陵の腹に自分の頬を擦り付けた。 出産前の妊婦とは固さが全然違うぼよんとしていて、中には実がいっぱい詰まっているそんな渉の性欲をますます駆り立てる、そんな腹。 三段になって思い切りつまんでもおつりのきそうな横の段をぐにゅぐにゅと握れば、その感触は天にも昇る気持ちになってくる。 キャサリンとのセックスは渉にとって理想をそのまま現実にしたものだった。 お相撲さんを連想させるほどぐわしっっと掴める胸。最高の弾力がある腹。 肉割れして弛みさえ愛しい、腕や腿。仕上げにきゅっと引き締まった足首。 そして、脂肪が付いて思い切り自分の分身を圧迫するあの部分。 渉は最愛すべき、キャサリンのボディを愛撫しながら、ドンドンと言う大砲の勢いまではないが、キャサリンを天国に導ける愛液を脂肪がいっぱい付いて狭い器官に打ちつけた。 「ぁあ…、あん〜んっ。最高! あゆむちゃん〜」 鼻にかかった低く野太い地を這う雄たけびを上げながら、キャサリンはピキンと勃った渉の腹に潮を思いっきり吹いた。 「で、今日は何があったの?」 キャサリンは深く深く沈むベッドの上で、何も身につけないまま胡座をかき、すい始めたせーラムライトの紫煙をふぁ〜っと吐いた。 「ばれた?」 「わからない訳ないでしょ〜?」 ベッドに寝転んだままの渉の柔らかいネコのような髪を撫でながら、もう一度煙草を口に銜えてから煙を吐き出す。 「渉ちゃん可愛いから、いやな思いもするんだろうな〜ってさ…」 「はははっ、すぐにばれちゃうな、一郎には…。なんか学生の頃から僕の世話焼きたがるやつが何人もいるんだけどさ…」 思い出しただけでも、体力をすべて奪うほど疲れてくる。渉は小さく溜息を付く。 「多いんだよね…。幼馴染とか、元学友だからって、色々と世話焼いてくれる奴…」 「それってもててるってことじゃないの?」 「うーん、でもさ、自分の絶対好きにならないタイプばっかりから声かけられて、嬉しいと思う? 贅沢かもしれないけど、でも付き合えないタイプの奴とは付き合えないでしょ?」 「まぁ〜ね。うーん、あたしたちみたいに趣味が決まっている人間は辛いわよね〜。まして渉ちゃんみたいに可愛くてもてるタイプは辛いわよね〜。ストライクとは逆のがついてきそうだしね〜」 「だよね〜。幼馴染でも学友でもいいから、ハンプティダンプティみたいになって、目の前に現れてくれないかな〜」 渉は小さく呟くと、キャサリンのトラックのタイヤのようなあぐらの上に頭を置き、寝返りを打った。 キャサリンはベッドサイドに置いてある灰皿に煙草を磨り潰すと、渉の唇に少し煙草の苦味のあるキスを落とした。 渉はぽよぽよの暖かい枕になっている腿に包まれながら、ゆっくり目を閉じた。 Fine |
そんな言い訳していいわけ?
夏コミ用無料配布。かわいこちゃん×巨漢。なので良心が咎め、性描写なし。 かわいこちゃん渉の理想はハンプティダンプティ。けれどなかなか理想の相手に出会えずに。 |
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