2000/8/03(木) |
Put Away(お片づけ) |
練習が終わると彼は周りがぐずぐずしているのに耐えられないようにてきぱきと片づけ を始めた。 オペラカルメンの合同練習初日。 さっきの休憩の時に眠そうに非常口で居眠っていた彼が想像できないくらい彼はてきぱ きとオーケストラが使った椅子を譜面台を片づけていく彼は俺が見ていることに気付いて いるんだろうか? いいや、彼の視線の先にはまだ片づけられていない椅子と譜面台しか写っていないん だろう。 少しだけ寂しさが生まれる。 彼はオーケストラの第一ヴァイオリン、俺は合唱。不思議な出会いだと思った。オペラで なければきっとこうやってヴァイオリンを弾いている彼と出会うことは無かっただろう。 一緒に片づけたかった。しかし片づけは皆オケのメンバーで行い、俺は”心ここにあら ず”のまま合唱の反省会をしている。 歌う側の人間は皆オーケストラの人と打ち解けようとしなかった。そして、俺も彼に、 オケのメンバーに話しかける勇気が出なかった。 同じレッスン場にいるのに見えない壁を感じる。本番近くなればなるほど、忙しくなり話 しかけるチャンスは無くなる。そんな気がした。
俺の横にまだ片づけられていない譜面台があった。俺はこっそりそれを小さく畳む。 「あ、これ」 「ありがとうございます」 始めて彼と言葉を交わした。 彼の声はテノールの優しい声に聞こえた。
To be continued...
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