2002/12/14 |
Aquarium〜現実主義者は見る夢を〜 |
序章 大手製薬会社 株式会社 A社 情報システム部 02:00 a.m. その晩は、うっすらとベールの様な雲が満月に目隠しをしている、そんな夜だった。 闇に包まれて静まり返った室内。 そこは昼間数十人の部員が働き様々な社員達が行き交う場所だという事を全く感じさせないほど、寝静まった世界だった。 その場の静寂をいきなり壊すように、モーター音…、ハードディスクが起動する音と共に、パチンと音を立てモニターが点く。 そしてカタカタカタ…、とコンピュータが処理している動作音が、無人のオフィス内に響き渡った。 時間にして数分…。 動いていたコンピュータは、シュンという音を立てて静止し、そしてまた起動を開始する。 起動を確認するメニューがモニターに流れ、幾つかの通常ではあり得ないプログラムを何行か表示する。 ゆっくりと不気味に一旦画面が止まり、大きくプログラムの起動画面が表示される。 『La vie en Rose(ラヴィアンローゼ)』 それは、何かを告示するかのように照らし出され、そしてコンピュータは事切れるように静かに動作を止めた…。 まるで春の夜長、その晩の月を朧気にしている雲のように、全てを覆い隠すような…、そんな様子だった…。 |